第5章 華
(…お弁当?)
そこには六つも積み上げられたお弁当と思しき物と、さつまいものスイーツしかない。
杏「これは朝食だ。」
「朝食…。いつも外食かお弁当なのですか…?」
りんはそう問うと、今度はシンク下の収納棚を開けた。
予想はしていたがそこにも何もない。
杏「ああ。母と弟に料理だけはするなと言われていてな。」
そう言う声は少し元気がなかった。
杏「……呆れただろうか。」
と言うのも、りんは終始『信じられない。』と言った顔をしていたのだ。
「あっ…、いえ、驚いただけです。」
(そういえば天兄が『食費はかさんでるはずだ』って言ってた…。)
りんが確認した限りでは、箸とスプーンとフォーク、それからコップしか見付けられなかった。
りんは口元に手を当てて少し考えると、『うん。』と言って頷いた。