第4章 誰のもの
杏寿郎はそんな様子を愛でると頬に当てた手でりんの顔を上げさせ、そっと優しく口付けた。
口を離すと今度は顔の角度を変えてもう一度口付ける。
それを何度も慈しむように繰り返した。
りんは薄く瞼を上げると、目を瞑って懸命に愛情表現してくれている恋人を見つめた。
(最初は恥ずかしいと思ってたのに…今はどうしようもなく幸せで仕方ない…。)
そんな事を思いながら杏寿郎に見惚れていると、杏寿郎がパチッと目を開く。
それを見たりんは慌てて目を閉じた。
杏(俺を見ていたのか。)
どんどん赤くなっていくりんを見ると、杏寿郎は笑い出してしまいそうになった。
杏(相変わらず愛らしいな。それにしてもこんなに好いてくれていたのに気が付かなかったとは。)
そう思いながらりんの頬を緩く撫でれば、りんは肩をビクンと跳ねさせて望んだ反応を見せる。
その容易さが愛おしかった。
杏(この姿を他の男に見せないよう守らなければならないな。)
そう思うと口を離し、代わりに額を合わせた。
杏「…今夜はここまでにしよう。舌を入れると君は腰を抜かしてしまうしな。」
その言葉にりんは目を伏せて耳まで赤く染めた。
「相手が好きな人だからです…。」
そう伝えると杏寿郎の首元に顔を埋めて表情を隠す。
杏寿郎は少し驚いた顔をした後、『そうか。』と穏やかに言いながらりんの頭を撫でたのだった。