第4章 誰のもの
「跡、残せましたか…?」
それを聞いた杏寿郎は不可解そうに首を傾げた。
杏「分かっていたのに何故抵抗しなかったんだ。きっと月曜までには綺麗に消えない。君の上司にも分かられてしまうかもしれないぞ。」
「…それでも良いかなと思ったんです。」
りんはそう言うと杏寿郎に両手を伸ばして抱擁をせがんだ。
杏「…………。」
杏寿郎は予想と異なる反応にすっかり毒気を抜かれてしまった。
そしてりんのすぐ傍らに横たわるとりんを優しく抱き寄せた。
杏「…すまない。冷静じゃなかった。口付けも…もっと大事にするべきだった。」
少し元気の無い声を聞いたりんは杏寿郎の熱く大きな体をきつく抱きしめ返す。
「確かにファーストキスはちょっと特別に思っていましたが、私が悪いですし…、それに……嫉妬してくれたのは嬉しかったです…。」
杏「嫉妬が嬉しい?」
杏寿郎は目を丸くして腕の中のりんの顔を覗き込んだ。