第4章 誰のもの
———バタンッ
りんはドアが閉まる音で我に返った。
「…な…にを…、だって…杏寿郎さんは……まだ私のことを…、」
『女として見ていないはずでしょう。』と言いそうになったが、自身で言うのも惨めな気がして言葉を飲み込んだ。
杏寿郎はその様子を大きな目で見つめる。
杏「君が何を言わんとしているのかは分からないが、準備ならできている。どちらにせよ日曜に誘うつもりだったのでな。」
「え…、」
杏寿郎は自身の雰囲気に飲まれて大人しくなってしまっているりんを見て目を細めた。
杏「藤川さんに迫られた時もそうして無防備にしていたのか。何をされてもおかしくなかったぞ。」
杏寿郎はそう言うと "それ" が藤川に限る話ではない事を示すように身を屈めた。
「きょ、じゅ、」
そして相変わらず隙だらけのりんを鋭い目付きで見つめながらも優しく口付けた。