第4章 誰のもの
杏「どうして他の男に隙を見せるんだ。初めて話した時にも言ったろう。約束したはずだ。頼むからしっかりしてくれ。」
今まで男に隙を見せた事などほとんどなかったが、余裕のない杏寿郎にぎゅうっと強く抱きしめられるとそんな言葉は返せない。
「ご、ごめんなさい…。付き合いで買った物だと言われて…付ける気はなかったのですが……、手を出すように言われて…。」
半ば強引に付けられたのだと分かると杏寿郎は小さく息をついた。
それと共にポーンと音が響いてエレベーターが停止する。
杏「…おいで。」
「……はい…。」
杏寿郎はりんの手を優しく引いてエレベーターを降りた。
杏「不死川達が言った通り俺は嫉妬深いようだ。他の男に『俺のものだ』とでも言うような証を付けられている君を見てどす黒い感情が湧いた。」
「…………杏寿郎さんが…嫉妬深い……?」
りんが小さい声で聞き返すと、部屋の前で立ち止まった杏寿郎は鍵を開けながら頷く。
杏「ああ。なので分かりやすく俺のものにさせてもらう。」
そこまで言われれば杏寿郎が何をしようとしているかくらい分かる。
それでもりんは混乱した。
「…それは……どういう、」
杏「俺は今夜、君を抱く。」
杏寿郎はそうキッパリ言い放つとドアを開けてりんを玄関に引き入れた。