第4章 誰のもの
「……杏寿郎さん?」
杏「…………………………。」
杏寿郎の顔からすぅっと笑みが消え、代わりに怒気のようなものが漏れ出て来た。
杏「その石、ばら輝石だな。」
「……え…?」
杏寿郎の低く唸るような声を聞いてりんは思わず半歩後退りをした。
杏寿郎はすぐにその分を取り戻すように大股で詰め寄る。
杏「日本でそれの原石が採れると有名なのは愛知のはずだが、これは君が自身で買った物か。それとも愛知へ行った誰かから贈られた物か。」
りんの瞳が揺れた。
その瞳を見れば誰から貰った贈り物なのかなどすぐに分かった。
「……それは…、」
杏「君は何故それを身に付けた。君は誰の恋人だ。」
りんは杏寿郎の嫉妬に燃える瞳から目が離せなくなっていた。
「も、もちろん、杏寿郎さんの…、」
杏「では何故、他の男からの贈り物を身に付けている。それもただの男ではない。君に想いを寄せている男だ。」
杏寿郎の冷たい怒りに触れたりんは言い訳も出てこなくなってしまった。
杏寿郎はそんな風に黙るりんを見るとブレスレットを外しながら目を細めた。