第4章 誰のもの
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藤「では、私はこれで帰るよ。水瀬さんもお疲れ様。」
「お疲れ様でした。」
そう挨拶する頃にはブレスレットの存在など忘れていた。
(杏寿郎さんに会える…!!)
ただただ、その一心になってしまったのだ。
急いで帰り支度をして、駅まで走り、もどかしい思いをしながら電車に揺られた。
そして、最寄り駅に着いてすぐホームに降り立てば、やはり見える鮮やかな髪色。
りんはパッと顔を輝かせると杏寿郎の元まで走った。
「杏寿郎さん!お疲れさまです…!」
そんなりんの様子を微笑ましく思いながら見守っていた杏寿郎も、太陽のような笑みを浮かべている。
杏「ああ!りんさんもお疲れ様!しかし急いでくれるのは嬉しいがそんなに走っては危ないぞ!今度からは…ゆっくりと……、」
杏寿郎は最後まで言い切らずに固まってしまった。
その視線の先にあるのは赤く光るブレスレットの石だ。