第4章 誰のもの
藤「あ、そうだ。君にお土産があるんだ。」
少し固い声でそう言うと、今日一日デスクに置いてあった箱を開けて赤い石が揺れるブレスレットを手に取る。
「…………え…?」
(ブレスレットがお土産…?)
ただの部下、ただの秘書であるはずのりんは当然戸惑った。
それを見た藤川は少し緊張を孕んだ笑顔を向ける。
藤「…いや、石川部長が奥様への贈り物を選んでいる時に私も勧められて買ったんだ。贈り相手がいないと言えなくてね。貰ってやってくれないか。」
『付き合いで仕方なく買った物を無駄にしたくない』だなんて言われれば、諌める事も断る事も難しい。
りんは目を泳がせて少し黙った後、ゆっくりと視線を上げた。
「……そういう事でしたら…ありがたく頂戴致します。」
藤川はパッと顔色を明るくさせて立ち上がる。