第4章 誰のもの
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杏(とうとう金曜日か。藤川さんが出社すると言っていたな。)
杏寿郎はそう思うと、朝練へ赴く前にりんへメッセージを送った。
それは、『仕事帰りに飲まないか。』というありふれた誘い文句だった。
当然りんは快諾した。
(今日は少し憂鬱だったけど一気にどうでも良くなっちゃった…!)
りんはそう思うと珍しくきちんとした朝食を用意した。
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その日、藤川は拍子抜けするほどいつも通りであった。
(……あと二時間。)
りんはちらりと腕時計を見ると頬を緩ませないように努めた。
その時、汗ばむ拳を握った藤川が視線を上げる。