第4章 オペラの友人(?)でロビンの先輩な話
全てを捧げると決めた神聖なバビルスで、こんなにも強い彼の想いを感じてしまい、伝えるべき言葉が浮かばなくて口を開くことができない。
断らなければ、いけない。
ありがとう。
ごめんなさい。
嬉しい。
何か言葉を発したいのに、繋がりのない単語の羅列ばかりが頭をかけぬけて真っ白になってしまう。
ロビンくん以上に真っ赤に染まっているだろう顔を隠すこともできずに見つめると、そんな私の顔を見てロビンくんは少しだけ悲しそうに眉を下げながら微笑んだ。
「先輩の気持ちはわかっています」
「…………そっ、か……」
「毎日ずっと見ていました。だからこそ先輩がバビルスに真っ直ぐなのもわかりますし、僕はそんな先輩と一緒に働ければ良いと心から思っていたんです」
「ロビンくん……」
「でも」
前髪に触れていたロビンくんの手がゆっくりと私の頬に移動する。
「こんな顔になってくれるなら最初から遠慮なくいけばよかったですね」
親指で私の目元を撫でる。
少しだけかさついている彼の指は熱い。
「次の休みに会う人とはまだ付き合ってませんよね?」
「は、はい………」
「僕は狙ったものは必ず仕留めます」
「家系能力、ですもんね…」
「先輩」
ロビンくんが嬉しそうに浮かべた笑顔を見た瞬間、突然視界が暗くなる。
頬に宛てられた手がそのまま私の目を覆い隠したようだ。
「改めてよろしくお願いします」
ロビンくんのにおいをふわりと感じ、口の端のすぐ横に何かが柔らかく触れた。
それが何かなんて、考えなくてもわかった。
「僕の感触を覚えて…デート、行ってきてくださいね」
手が外されて視界が再び明るくなる。
ロビンくんが体ごと私から距離をとりながら、私に手を伸ばしてキスをした箇所を指でゆっくりと撫でると、満足そうな笑みを浮かべれば
「では!この資料提出してきます!」
突然にいつものテンションの高さで元気に声を出し、資料を片手に持ち教室を飛び出していった。
静かになる室内。
少しずつ消えていく彼の足音。
嵐のように立ち去ったロビンくんを、やはり喜怒哀楽の表現力が素晴らしいと評価をしながら、それ以外に何も考えることができなくて。
彼の触れた箇所をしばらく手で抑えて立ち尽くすしかできなかった。