第3章 アメリと入間と話をする
「、口元にパンがついてる」
「えっ、どこ?」
「そっちではない!もう少し下だ」
どうやらパンをこぼしてしまったようだ。
子供みたいだと思われたに違いない。
アメリの言われるがままに手を口元付近で動かすけれど、中々取れない。
だけど取れないままに授業には絶対入りたくないので思い当たる顔の箇所に手を触れていると「、そのままそこで止まれ」と声がかけられた。ピタリと動きを止める。
アメリは私に体を少しだけ寄せながら手を私の顔に近づけて…
「………ほら、ここだ」
私が動かしていた場所より少しだけ下、顎の近くにアメリの細い手が一瞬だけ触れて離れると手元にはパンの欠片。私のである。
「ありがとうアメリ」
手を拭いてもらうためにポケットからティッシュ出しながら声をかければ、アメリは当たり前のようにそれを口にする。
私の口に触れていた物がアメリの口に入ってしまったことが幼なじみとはいえ恥ずかしく、思わず赤くなる頬を抑えてアメリを見ると「風が気持ちいいな」私の視線をどう捉えたのかわからないけれど、どことなく嬉しそうに微笑むアメリが何だかおかしくて、恥ずかしさも忘れて少しだけ笑ってしまった。
確かに今日は気温もほどよく、ゆっくりと通りすぎる風が心地よい。
静かに目を閉じてゆるやかに通りすぎる暖かな風を受けていると「そういえば」アメリがポツリと呟くのでゆっくりと目を開いてアメリに顔を向ける。
先程の私のようにほんのりと頬を染めたアメリがそこにいた。
その理由がわからずアメリの言葉が続くよりも先にじっくり見てしまうと「風が暑いからだ!」と質問の前に少しだけ大きな声で回答され、その勢いに「お、おう」と勇ましい返事を返してしまったことは、しょうがないと思う。
赤くなる原因……、アメリの座っている場所は日向にあたっているので暑いのかもしれない。
少しだけ奥にある日陰に移動しよう。
そう考えてのんびりと立ち上がれば、アメリも私の意図に気づいたのか同じく立ち上がり、二人並ぶように歩き始めた。