第8章 我慢の先には・悲鳴嶼行冥
悲鳴嶼は急いで家に向かっていた。鬼殺隊の実力者である彼はいつも任務にそれほど時間はかからなかった。泊まりがけもほとんどない。それがたまたま続いてしまった。
(鈴音は心配してるだろうか。)
正直、悲鳴嶼の体の心配よりも、鈴音自身の方が心配だった。昔鬼に襲われた経験もあるからか、夜に寂しそうな顔をしている時があった。やはり心細いのであろう。
(なるべく側に居てやりたい。)
悲鳴嶼は家へと急いだ。
着いた家は、まだ早い時間だったが、明かりが消えていた。
(鈴音は、もう寝ているのだろうか。)
音を立てない様に、寝室に使っている、自身の部屋へと向かう。
案の定、布団が敷かれ、鈴音は横になっていた。しかし、布団の中からくぐもった声が聞こえてくる。
「、、、んっ、、あっ、、、」
かすかに鈴音の喘ぎ声がする。悲鳴嶼は息を呑んで、そっと布団に近づいた。
「、、、ぎょうめいさ、、、かえってきてぇ、、、」
鈴音の涙声に、我慢出来なくなった悲鳴嶼は、布団を捲った。
「、、、ただいま、鈴音。」
「、、、ぎょうめいさ〜ん。」
鈴音は泣きながら、一生懸命首に抱きついてきた。
「、、、頭まで布団を被って、何をしてたんだ?」
思ったよりも鈴音に意地悪をする様な声音になった。
「あのね、ぎょうめいさんがいなくて、からだがあつくて、どうしたらいいかわからないの。たすけて。」
鈴音からの可愛らしくもいやらしいお願いに、悲鳴嶼は唇の端を持ち上げた。
「、、、承知した。」
悲鳴嶼は鈴音に覆い被さった。