第7章 贈り物・悲鳴嶼行冥
「、、、鈴音、今帰った。」
悲鳴嶼の声が玄関からした。鈴音はパタパタと玄関に向かう。
「お帰りなさい、行冥さん。まぁ、どうしたんですか?」
悲鳴嶼を見て、鈴音は目を丸くする。悲鳴嶼は両手いっぱいに袋や包みを持っていた。花束も見える。
「、、、もらってくれるか?」
悲鳴嶼が照れ臭そうに花束を差し出した。
「私にですか?ありがとうございます。」
鈴音の声が弾む。悲鳴嶼は見えないが、鈴音が笑っているのがわかった。
「、、、いつも君にはもらってばかりいる。これで少しは返せるだろうか。」
悲鳴嶼は包みや袋を鈴音に差し出した。鈴音は目をぱちくりさせた。
「これ全部ですか?流石に多過ぎます。」
「君に買ってきた物だ。君が受け取ってくれないと意味がない。」
悲鳴嶼は包みや袋を横に置くと、鈴音を抱き締めた。
「、、、私、何もあげる物がありません。」
鈴音がポツリと呟く。
「さっきも言っただろう。君からはたくさんのものをもらっている。」
悲鳴嶼の手に力が入る。
「君はたくさんの愛を私にくれる。美味しい料理も、綺麗な隊服も、君が用意してくれるから、さらに特別なものになる。このような仕事をしていると、心が荒んでくることもあるが、君が居てくれるから私は私でいられるんだ。鈴音、君は特別なんだ。」