第3章 数学教師・不死川実弥
今日は3月1日、卒業式の日だ。いろははバレンタインの後から不死川先生とほとんど口をきいていない。
「いろはぁ。」
教室に入ろうとしたいろはを呼び止めたのは不死川先生だった。
「お前、卒業式おわったら数学準備室まで来い。」
それだけ早口で言うと、不死川先生は教室に入って行った。
いろはは卒業式どころではなかった。不死川先生から呼び出された。バレンタインの返事がもらえるのだろうか。いや、いい返事がもらえるわけない。でもこれまでお世話になったんだ。お礼くらい言ってもいいだろうか。
いろはは、数学準備室の前で大きく深呼吸した。ノックをする。
「入れぇ。」
不死川先生の声がする。
「失礼します。」
いろはが扉を開ける。目の前には、大好きで大好きでたまらない不死川先生がいた。
「よぅ。」
不死川先生が、いたずらっ子のような笑顔を見せる。
「とりあえず、卒業おめでとう。」
「ありがとうございます。」
その後、しばらく無言の時間が過ぎる。
「あの、、、先生?何か用事があったんじゃ?」
いろはにそう声をかけられて、不死川先生は、綺麗にラッピングされた小さな箱を差し出した。
「これ、私に?」
「、、あぁ、開けてみろ。」
いろはが箱を開けると、ブレスレットが出てきた。
「先生?これは?」