第3章 数学教師・不死川実弥
いろはは高校3年生になった。3年生になって、やっと不死川先生が担任になり、いろはは小躍りして喜んだ。そんな高校生活ももう残り少ない。いろはは近くの大学に推薦が取れて、一足先に受験戦争から抜けた。正直、不死川先生のおかげだと思ってる。
「不死川先生、いる?」
いろはは数学準備室の扉を開けた。
「いろはかぁ?ノックぐらいしろ。」
数学準備室の奥から不死川先生の声がする。
「せんせっ、お疲れ様」
「あぁ、みんなお前みたいにすんなり大学が決まってくれたらなぁ。」
不死川先生は、本当に疲れてるらしく、珍しくそんなことを言った。
「先生、今日何の日かわかってる?」
「あぁ?今日?特になんもないだろ」
「2月14日、バレンタインだよ。」
いろはは後ろ手に持っていた包みを、不死川先生に差し出した。
「先生、好きです。」
いろはは包みを不死川先生に押し付けた。
「入学式で会った時に一目惚れしました。それからずっと好きです。先生と生徒だってわかってるけど、どうしても伝えたくて。」
失礼しました、と、いろはは言いたいことを言って数学準備室から走り去った。
振られるのが怖かった。生徒としか見れない、と言われるのを聞きたくなかった。