第3章 数学教師・不死川実弥
「せんせっ、不死川先生っ。数学教えて〜。」
「またお前か。」
「数学わかんないの。教えて、先生。」
女子高生・東いろはは大好きな先生を見上げた。目つきは悪く、傷だらけ。スパルタだから苦手にしてる生徒も多いが、いろはは高校1年生の入学式で一目惚れした。
「ったく、しょーがねぇな。準備室来い。」
不死川先生は立ち上がると、数学準備室に向かって歩き出す。いろはもその後を追いかける。
いろはは高校の入学式の日迷子になっていた。もうすぐ始まる時間だ。でもここがどこかわからない。いろはは泣きそうだった。そんないろはの目に人影が映った。慌てて声をかける。
「すみませんっ。」
「、、、あぁ?」
人影が振り返った瞬間、いろはは雷に打たれたような衝撃を受けた。まさしく一目惚れだった。
「、、、新入生かぁ?」
いろはが呆然と立っていると、彼の方から話しかけて来た。
「っ、そうなんです。迷子になってしまって。」
「しゃーねぇなぁ。」
彼はいろはの手首を掴むと、歩き出した。しばらくそのまま着いて行くと、【入学式 体育館 こちら】と書いた看板があった。
「ここを真っ直ぐだ。」
彼は手を離すと、くるりと踵を返した。
「あ、ありがとうございました。」
彼は背を向けたまま、ひらひらと手を振った。
いろはの大事な思い出だった。