【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
孕みたくない、産みたくない。
(俺は……男で居たい…………)
ギュッと手を握りしめたのと同時に、木兎と言う人の声が響いた。
「そうだ赤葦!流石の赤葦もビックリする事があるんだぜ !! 」
「へぇ、それは凄いですね」
「まだ言ってない !! 」
サラッと流そうとした赤葦さんに異を唱え、木兎と言う人は何故か誇らしげな表情になって話し出した。
「今年の新顔はすげーんだからな !! ウシワカと一緒にいる……ぅ?」
段々と声のテンションが下がっていく木兎と言う人が指さす方向に立つ二人組。
体格が良い男子と少し男からすると小柄な男子。小柄な男子はオレンジ色の髪色をしていて、雰囲気が俺達に似ていて学生会新メンバーである事がすぐに分かった。
「あり?ウシワカ?」
「どうした木兎?」
体格の良い方のウシワカ、と呼ばれた相手は表情を一切変えずに答えていた。一方のオレンジ頭の方は何やら落ち着きない様子でいる。
その落ち着きのなさは緊張から来ているのとは、少し違って見えた。
そして、ウシワカの方を見た黒尾と言う人の表情が一瞬にして変わる。それは怒りの表情であった。
眉間に皺を寄せながら、ウシワカの方へと歩みながらに言っている。
「うーしーじーまーぁー?海野は何処に行ったぁ〜〜?」
尋ねられたウシワカ、は一切動じずに答えていく。
「入ってすぐに『こんな面白い所、探検しない訳にはいかないからちょっくら行ってくる!黒尾パイセンへの誤魔化しは、うっしーとしょーちゃんよろぴく!』と言って何処かに行ってしまった」
その説明に全員が止まった。レヒツである俺達は話が見えないが、リンクスの方は違うらしい。
怒りに震える黒尾と言う人に、オレンジ頭はますます慌てふためいていた。
「くっ黒尾さんごめんなさい!海野さん止める前に木登りしていなくなっちゃって……」
その言葉に、黒尾と言う人の怒鳴り声が響き渡った。
「あの馬鹿野郎ーー !! 」
◆
「つまり、そっちの新メンバー一人がこの空間の何処かに逃亡してると」
状況を把握した岩泉さんの言葉に、黒尾と言う人の大きな溜息が聞こえる。青筋を立てている所を見ると、本気で怒っている様だった。
「絶対に大人しくしてろ言ったのに……牛島!なんで海野を好き勝手させた !! 」