【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
「どうしても、と頼まれたからだ」
即答で答えられ、黒尾と言う人はがっくしと肩を落として言う。
「お前四年を甘やかすの本当に止めろ……」
「可愛い後輩の頼みは断れない」
「可愛くなんかないわ!あのじゃじゃ馬娘は !! さっさと見つけるぞ !! 」
ズカズカと部屋を出ていく様子をぽかーんと見送った。正直話が見えないし、何が何だかと言った感想である。
完全に置いていかれている俺達に、特大の溜息を付きながらリンクスの一人が近付いてきて説明をしてくれた。
「顔合わせ早々本当に申し訳ないです。四年の海野が勝手に出歩いてるみたいだから、探すのを手伝ってもらえますか?」
「まー、なんだか面白そうだから良いけど、賢二郎もうちょっと詳しく説明ちょーだい」
ニコニコと笑う天童さんに、溜息を付いてから改めて話をされた。
「俺はリンクスの執行委員に就いている白布賢二郎だ。で、こっちの書記である海野がまた!勝手な!行動を取ったから、見つけて欲しい」
「どんな見た目の子〜?」
口調から白布と名乗った相手が怒っているのは明白だったが、天童さんは全く気にしていない口調であり、そんな彼を見て、言う。
「小柄で腰下まである酷いくせっ毛の女子。見たらひと目で分かります」
容姿を聞くと天童さんは俺達の背中をグイグイ押しながら、本当に楽しそうに言ってきた。
「ほらほら新メンバー!学生会最初の仕事はかくれんぼだよぉ〜」
「えぇっ !? 」
「いや……かくれんぼは違いますよね?」
慌てる谷地さんと呆れる国見と共に、外へと強制的に連れ出されてしまうのだった。
◆
「…………」
無駄に広い空間を一人で歩き回る。
無断で動いている海野、と言う女子は木登りをしていなくなったと言う事で、何処に居るのか予想出来ないらしい。
(探すフリだけして、何もしないでいればいいよな……)
関わりたくないαの人間を探したくなんか無いから、適当に壁伝いにノロノロと歩いていた。
こんな探し方をしていたら、絶対に見付ける事なんて出来る訳ないと確証を持っていた。上を見ないで下を見て歩いているのだから。