【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
「噂は本当みたいだねぇ。媚び売ったらもっと買ってもらえるかも」
アレが欲しい、これが欲しい、と指折り数える天童さんに対し、治さんは落ち着いた様子で言ってきた。
「まぁ俺は向こうにツムがおるから知っとったけど」
「若利君、そう言うの全然教えてくれないとか、マブタチに対して酷くない?」
はぁ〜、とわざとらしい溜息付く天童さんの事をただただ見るしか出来なかった。
どうやら、急な模様替えが学生会に発生した事、そしてそれはリンクスの一人の行動である事は分かった。
(そう言えば国見も言ってたけど、『あの話』って本当になんだ……?)
周りを拒絶し、関わる事をしない俺が知らない『何か』が学校に起こっている。それはレヒツもリンクスも巻き込む様な大事となっているのだ。
「あかーし!俺と番にならないかっ!」
バタバタと勢いよく走ってきた人が出会い頭にそんな事を言っていて、俺に対してではないのに身体が固まった。
灰色の髪を立てている、元気の良い男子生徒。話し掛けられた赤葦さんは日常茶飯事で慣れているのか、微塵も焦る様子が無く、淡々と答えていた。
「お気持ちだけ受け取っておきますね。俺は女性のαを探そうと思います」
「つまり清水と番って事かっ !? 」
ががーん、と言う擬音がぴったりの表情で言うと、清水、の名に反応した女子が無表情で手を振りながら言い切った。
「ならないならない」
「木兎さん、清水先輩に失礼ですよ」
「えー、だって赤葦女子と番になりたい言ってるじゃんかー」
「女性のαは清水先輩だけじゃありませんから」
「ぶーぶー」
口を尖らせる木兎、と言う人に赤葦さんは綺麗に躱している、と言った感じだった。
「岩ちゃん元気してたぁ〜?そっちは人数多いから纏めるの大変だよねぇ〜」
「おっ、蝿がいるな」
そう言う岩泉さんの声とほぼ同時にスパーンと綺麗な打音が響いた。岩泉さんの足元で頭を抱えて悶えている相手はすぐに立ち上がると、涙目で訴えてきていた。
「蝿なんか何処にもいなかったじゃん !! 」
「いるだろ、でっけぇ及川徹(はえ)が一匹」
「俺のルビが絶対におかしい!岩ちゃんの人でなし !! 」
ワーワー騒ぎ立てる相手に、岩泉さんは本当に嫌そうな顔をしながら指で耳の穴を塞いでいる。