【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
「もっちろん分かってますよぉー?私を誰だと思ってるんですかぁー?」
不安しか感じない返答に、黒尾はちりちりと胃痛を感じずにいられないのだった。
◆
開いた扉を潜り先へ進むとそこの空気は違っている気がした。
何となく空気が澄んでいると言うか、中庭や外よりも木々が生い茂っている気がした。
「…………」
圧巻の一言。
学生の為に用意された場所としては不釣り合いな位に整備された空間。
無駄な程に広く、入ったばかりとは言え、リンクスの入口が視界に入ってこない。それ程までに距離がある、と言う事になるのだろう。
「すご……」
流石の国見も造りの広さに声を漏らし、谷地さんに至っては何故か泡を吹いて倒れかけて、国見に掴まれていた。
「凄いやろ、学校の敷地内にある場所やなんて、思えん位の造りで」
俺達が呆気に取られていたからだろうか。声を掛けられてその方向を見る。そこに居たのは銀髪でツーブロックの髪型をした先輩。
訛りがあるな、と思っていると話を続けられた。
「あ、俺五年の宮治。会計やっとってそっちの谷地さん、やったっけ?同じ会計やからよろしゅうな」
「はっはいぃ !! 」
「んな緊張せんでええで?深呼吸ー深呼吸ー」
宮さんの言葉に谷地さんは必死に深呼吸をして、落ち着こうとしていた。その様子を黙って見ていると、バチっと目が合ってしまった。
「君ら二人がΩの影山君と国見君やな。同じΩ同士よろしゅうなぁ〜」
ヒラヒラと手を振られ、言葉を返せずにいると国見が口を開いてくれた。
「宮さんは……」
「あ、俺の事は治かサムって呼んでくれーな。リンクスの方にも宮がおるんねん。俺の兄弟なんやけど」
その言葉にハッとした。兄弟でαとΩが出たと言う事を言われたのだから。しかし、言ってきた張本人は全く気にしている様子は見受けられなかった。
「んで、話戻るんやけどここはもう何十年も前からずっと使われとる場所で、αとΩの友好の証でもあるらしいで。環境はええし、学生会のメンバーならば何時でも自由に使ってええから、良いサボり場所にもなるで」
楽しそうに話す治の事を黙って見続けていると、治さんの肩を抱きながら話に割り込まれてしまう。
昼間会った時もお菓子がなんやら話していた人だ。逆立つ赤髪が印象的である。