【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
それだけ言うと、国見も通行許可証(ゲートカード)を使い中へと行ってしまった。
国見までが入ってしまうと、俺達も急がねばならなかった。
谷地さんは何度もカードを落としかけながら何とか機械に通す事が出来、中へと入る。
その背中を見送りながら、俺はもう一度通行許可証(ゲートカード)を見た。
諦めるしかない、出来るだけ目立たずに、空気の様に過ごしてリンクスの奴らの意識に残らない様にするしかない。
自傷気味に笑いながら、覚悟を決め中へと足を踏み入れた。
◆
「この先からは選ばれた人間だけが入れる空間。ただし、それはあくまでもレヒツの奴らの話だ。αは人数が圧倒的に少なく、全員が参加になっている」
黒々とした髪を立たせ、長身が余計に長身に見える男子は、何重にも仕切られた扉を前にして話をしていた。
「レヒツには必ずΩが数名参加する事が義務付けられている。昔と違い、αだΩだ、って言う差別意識は無くなっているけれど、だからと言って第二性による上下関係が無くなった訳では無い」
くるりと踵を返し、腰に手を宛て話を続ける。
「俺達はそんなΩの劣等感を少しでも拭っていく役目を担う世代だ。新入生のΩには変に気を使わず、誰でも同じ対応をする様に。特に」
ビシッと一人の少女を指差す。指された少女は話を聞いていなかったのか、小首を傾げて見てきたので溜息をが出てしまう。
「まだ両校正式発表はしていないが、人間の口には戸は建てられない。既にリンクスには噂として話が出回っているらしい。だ、か、ら!」
釘を刺す様に、耳にタコが出来る程に執拗く言われてきた事をまた言われた。
「お前は変にΩを刺激するな!分かったな!海野!」
海野、と呼ばれた少女は指差す相手をじーっと見つめてから、気の抜けた声色で返事を返した。
「はーい、黒尾ぱいせん分かりましたぁー」
「絶対に分かってねぇだろ。てか先輩の話、ちゃんと聞いてた?聞いてないよね?ねぇ?」
黒尾の問い掛けに、返事は来ない。つまり、聞いていなかった、と言う動かぬ証拠である。
「頼むから問題を起こさないでくれない !? 今日は初日!初顔合わせ!分かるかなぁ !? 」
黒尾の切実な訴えに、ゆっくりと顔を動かし、笑顔の返答が返ってきた。不自然過ぎる程の笑顔で。