【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第10章 2話 箱庭へ
時間の流れを止める事は出来ない。気が付けば放課後を迎えてしまい、学生会の集まりの時間になってしまった。
逃げてしまいたい所だったけれど、学生会は学校の代表。そしてリンクスとレヒツの友好の証でもある。
そんな第二性が健全に交流出来ている、と言う関係にヒビが入る事は許されない事である。
逃げられない運命から、足が重くなっていく。進めば進む程、泥沼でも歩いているかの感覚だ。
先を歩くレヒツの学生会のメンバーの背中を見ながら、俺は最後尾を歩いていた。
手にある通行許可証(ゲートカード)を黙って見る。学生会のメンバーのみが所持を許された、通行証。
この通行証を使ってのみ入る事が出来る交友所が、レヒツとリンクスの生徒が交流出来る唯一の場所となる。
岩泉さんの話によるとかなりの広さがあり、会議室は勿論の事、自然溢れる中庭に茶会をするスペースまで完備されているらしい。
そんな場所は生徒にとっての憧れの場であるらしい。
特にレヒツにとっては社会に出る前にリンクスの人間と接点を得られる、唯一無二の場となる。
「知っていると思うが、此処が出入口だ。この先に入れるのは学生会の人間と教職員のみだ」
岩泉さんの声に顔を上げた。厳重な作りをしている扉の隣には通行許可証(ゲートカード)を認識する為の機械が取り付けられていた。
(この先に……)
αが、居る。そう思うだけで気が重く沈んでいく。
見た事もないリンクスのメンバーに、嫌悪感すら感じてしまっていた。
「ここの機械に通行許可証(ゲートカード)を通すんだが、一緒に学生証も通してくれ。本人以外は使えない様になってるけど、無くしたりするなよ」
そう言いながら機械に宛てがうと、重々しい扉が開く。
一人ずつしか入れない様に厳重に作られている扉を、順々に進んでいく。
慣れきっている先輩達には当たり前の行動だが、俺達三人は違う。
流石に国見の表情も固くなっているし、谷地さんに至っては顔面蒼白だ。
「はーはー、深呼吸しても全然落ち着かないよぉ……」
泣き言を言った谷地さんを見て逆に緊張が解れたのか、国見は自分自身に言い聞かせるかの様に、割り切った声色で言った。
「行くしかないでしょ。それが学生会に選ばれた責務なんだから」