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【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】

第9章 1話 理不尽なこの世界


「確か一年のΩは影山と国見の二人だな。分かってると思うが、学生会のメンバーは集まりの前に必ず抑制剤の服用が義務付けられてる。その分の薬は学校の方から支給してもらえるから、二人とも病院に処方申請しておいてくれ」

 淡々と説明してくる相手を黙ってみる。
 黒髪にツンツンとした髪型をしていて、一番デカい机に座って資料を見ている所を見るとこの人がレヒツ側の会長なのだろう。

「分かりました。影山、ちゃんと聞いてたか?」

 国見に膝でつつかれ、無言で頷いて応えると、会長は続けて言う。

「俺がレヒツの生徒会長の岩泉一だ。他の奴らは今日の集まりの際に互いに自己紹介する事になる」

 岩泉さんの話声も何処か遠くで誰かが話しているかの様に聴こえ、頭には入って来なかった。
 学生室に居ても現実味は一切湧かず、他人事にしか感じない。でも、次の一言に現実に引き戻された。


「リンクスの学生会のメンバーだけど、新入生は分からねぇけど、それ以外の奴らは気さくな奴らばかりだから気を張る事はねぇぞ」


 そうだった。学生会のメンバーは此処に居る人達だけではない。まだ見ぬ‪α‬の集団、リンクスの奴らが居る事を。
 優れたる存在である生物上位者が。

(…………関わりたくねぇ……会いたくねぇ……)

 そんな事を考えているのが丸分かりだったのか、横っ腹を国見の肘が付いてきた。
 国見の表情は『割り切る事を学べ』と言わんばかりであった。
 そんな事は分かっている。分かっている。


 自我(エゴ)が訴えているのだ。劣る存在のΩでいたくないのだと。


(‪α‬になりてぇんじゃねぇ……俺はβになりてぇんだよ……)

 第二性さえ無ければ。第二性による格差社会さえなければ。
 理不尽な世界さえなければ。
 こんな卑屈な人間になる事なんて、なかったのに。
(2021,10,9 飛原櫻)
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