【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第9章 1話 理不尽なこの世界
最後消え入りそうな声で言いながら、真っ青な顔をしている谷地さんの姿を見ていると釣られて青くなりそうになった。
レヒツの先輩達は俺達と同じ環境で生きているβとΩだし、まだ大丈夫な気はする。
でもαであるリンクスの人達は正直想像も付かない。
選ばれた才を持つαしかいない集団だ。αと関わった事はほぼないが、テレビで見た事のあるαの印象は傲慢で高飛車だった。その人がたまたまそう言う性格を持つ人だっただけなのかもしれないが、Ωである俺には脅威の対象にしか見えなかった。
「優れていて当たり前」「Ωは黙って従っていろ」と言うオーラを隠す事なく出している人だった。一回しか見てはいないが、余りにも不愉快だったので忘れる事が出来なかった。
(リンクスに居る奴らもそう言う意識持ってんだろうか…………)
会った事もない相手に対しても、卑屈な考えが離れなくてそう考えずにはいられない。
そもそも十二歳のバース性診断で第二性が分かった数か月しか関わった事がないし、互いに子供だから第二性の事でふんぞり返っている奴を俺は見ていない。
αもΩも人口数からしたら本当に少ない。大半がβなのだから当然であるが百人いた中でαとΩがいる確率は全体の五パーセント前後で、人数で言えば五人。更にその五人の中でαとΩどちらが多いか、と言えばΩの方が多い。
性犯罪を防ぐ事より第二性の提示が義務付けられていて、第二性を隠す事のない社会であるから互いが何であるかは分かっている。
何より第二性によって通う学校が変わる時点で互いに大きな壁を作り、精神的成長があるまで会わないのだ。
だからαの人間性はメディアに出ている人達しか分からない。
それが余計に俺にαを悪く見せているのだ。
「学生室は此処だね」
立ち止まって言う国見の声に閉まっているドアを見た。
学生室、なんて言うと聞こえは良いが結局は教室である事は変わらないので他と変わりない。
そりゃあ校長室とかだと多少は違うとは思うけど、教室は教室、である。
「国見君、ちょっと待って……。緊張してきたから手のひらに人と言う字を…………」
ガチガチに固くなりながら言う谷地さんを見て、国見はガラッとドアを開けながら言う。
「谷地さんのそれ、数分掛かるから」
「ヒィッ!」