【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】
第9章 1話 理不尽なこの世界
廊下で待たせている谷地さん、に声をかけているみたいだった。
不本意であっても決まった以上、逃げる事は出来ない。だったら出来るだけ関わらない、最低限だけの接触にするしかない。
腹を括って立ち上がり、廊下に出た。
「ヒィ!」
俺の姿を見て何故かビビられた。ぐるぐると目を泳がせながら、谷地さんは慌てた様子で頭を下げて言う。
「は、初めまして!や、谷地仁花です!βです!国見君とは同じクラスです!よろしくお願いしゃす!」
「谷地さん、落ち着いて」
慣れた様子で言う国見を見る限り、谷地さんは俺相手だからこうなっているのではなく、元々こう言う性格の様だった。
だが、そんな事よりも谷地さんが自己紹介で言ったバース性にモヤッとした。
β
俺がなりたくて仕方ない性を持つ谷地さんが羨ましくて仕方ない。一番生きやすいβが羨ましくて仕方ない。
谷地さんは何も悪くない。それでも顔に出ていたのだろうか。国見が溜息一つ付いて言う。
「影山、顔」
その言葉にハッとしてから国見を見た。谷地さんの方は不思議そうな表情をしているので、理解出来なかった様だ。
「…………影山飛雄、です。国見と同じ、Ω、だ」
やっと返した自己紹介に対して、谷地さんはまだ緊張が抜けていないらしく、わたわたした様子で言ってくる。
「わ、私なんぞやが学生会のメンバーに選ばれるなんて恐縮です!二人共身長高いし、…………何だか並んでると私がΩみたいだね」
「ま、バース性に体格は関係ないからね。谷地さんみたいに小柄なのから、俺達みたいに大柄までなんでもいるから」
よくある当たり障りのない第二性に関する会話。聞き慣れていても受け入れる事のない話。
もし、俺の第二性がΩでなければこんなにも捻くれた考えを持たずにいたのだろうか。βだったら大多数の中で生き、αだったら……。
黙って考え込んでいたら国見に背中を叩かれて、顔を上げた。
「ほら、兎に角レヒツサイドの学生会の先輩達と顔合わせあるから行くよ」
「あ……あぁ…………」
スタスタと歩く国見の後を追っていると、胸に手を当てながら谷地さんは独り言の様に呟いていた。
「はぁ~~……緊張するよぉ…………。先輩達、どんな人達なのか緊張するし、放課後はリンクスの方々と顔合わせなんて……もし何かヘマしたらどうしよう」