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【オメガバース夢小説】闇の中の光の波紋【HQ/影山飛雄】

第9章 1話 理不尽なこの世界


 よりにもよって一番関わりたくないαとの交流が出来てしまうなんて。

「こっちのクラスはやりたいです、って人多かったけどね。まぁ『あの事』が合ったから当然って言えば当然だけど」
「『あの事』?」

 国見の言葉に首を捻ると、これ以上ない位に眉間に皺を寄せた顔で見られた。その表情と言ったらまるで軽蔑でもしているかの様だ。

「……はぁ…………。まぁ影山はα嫌いだから仕方ないか」
「悪かったな、α嫌いで」

 第二性が分かってから自分が劣る存在でしかないと、俺は自然と周りと壁を作っていた。元々の性格から人の輪の中心に居た訳ではなかったので、然程困る事はなかった。
 一期生になってから同じΩである国見と一緒にいる事が多く、その国見と昔からの付き合いであるβの金田一と交流があった。
 この二人以外と親しくなった記憶はない。困らないし、十分だと思っている。
 そんな二人は俺がΩである事に対しての感情を知っているし、αと関わりたくない事の理解もしてくれていた。
 だから一緒にいて苦痛じゃなかった。


「……お前はΩで嫌じゃないのかよ」


 耳にタコが出来る程、何度もこの言葉を国見に投げかけている。国見もまたか、と言う表情をしつつも毎回真面目に答えてくれる。

「別に。俺はΩである事を受け入れてるから。社会的に地位が低かろうが今後出会うパートナーの子供産む事になったとしても、それがΩとして普通なんだから」

 普通。当たり前。
 それが俺には納得出来ないと言うのに、国見はそれが当然の様に受け入れている。
 いや、国見の考えが普通であり、俺が異常なのは最初から分かっている。ただ、理解するのと受け入れるのが別なだけな話で。

「ま、産む側になりたくなければその選択肢で生きていけばいいだけじゃないの?」

 この考えもまた普通である。世の中にはαと番う事を望まぬに番なしとして生活をするΩもいる。それもこの社会での生き方の一つである。

(……それでも結局縛られた社会で生きるだけだけどな)

 αに守られるか、ドームに守れるか。二つに一つの様に思われる選択肢だが、結局は『守られる』だ。
 どう転んでもΩは鳥かごの中で生きるしかない理不尽な社会。

「兎に角、外で谷地さんに待ってもらってるから早く行くよ」

 はぁ、と溜め息を付いてから国見は教室から廊下へと出ていってしまう。
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