【夢小説】オタク+オタク=? 番外編【影山飛雄/R18】
第10章 ◎すれ違い
今流行りの恋愛モノで中高生に人気があるらしいから、堅治と一緒に見てきたら、と言われた。
日付は十日後の土曜日。
まだ堅治の予定は聞いていないけれど、この間の埋め合わせでも良いから一緒に行けたらいいな、と淡い期待をしていた。
「久しぶりのデート……出来たら良いな」
柄にもなく浮き足立った気持ちで、堅治の元へと向かう。
昼休みも部活の集まりがあると言っていたので、そっと体育館に足を運び中を覗き込むと、軽く身体を動かしているのが分かった。
「けん……」
声を掛けようとしたのだけれど、ボールが床を叩く音に私の声はかき消されてしまった。
どうしようかな、と困っていると青根君と目が合った。
彼は私に対しての面識も多いし、すぐに堅治に用があるのだと分かってくれて、堅治を呼び止め私の方を指さしていた。
「なんだ、珍しいな」
堅治の言葉はごもっともである。
私はバレー部のマネージャーじゃないし、邪魔にならない様に、と余り顔を出さない様に意識しているのだから。
「うん、ちょっとね」
どう映画の話を切り出そうかと考えていると、堅治は何時もの調子で言ってきたのだった。
「悪ぃな、時間なくて。暫く他校との練習試合続くし、アイツらの相手で手一杯なんだよ」
堅治の一言に心にドロリと溜まる音がした。
まだ何も言ってないのに、部活で手一杯だと言われてしまった。
また、私の事は後回しに、と遠回しに言われた気がした。
「そっ……か」
カバンの中に入っている映画のチケットの姿を思い出すと、目がうるんできた気がした。
駄目だ、このまま此処に居たら泣き出してしまう。
「分かっていたけどさぁ……」
部活の話をしてくる堅治の言葉が何一つ、耳に入ってこない。
脳裏に過ぎるのは、あのあの楽しそうに話し合っているカップルの姿。二枚ある映画のチケット。
「そうだ。何か用事だよな?何か……」
「……ごめん、何も無いから私帰る」
堅治の言葉を遮る様に言い、下を向いたまま来た道を引き返した。
「紗良っ !? おいっ!」
焦る堅治の声が背後から聞こえたけれど、歩みを止める所かペースを上げて足早に下駄箱へと向かっていく。