【夢小説】オタク+オタク=? 番外編【影山飛雄/R18】
第10章 ◎すれ違い
そう言えば付き合いたての時に連れて行ってくれたスポーツショップで、堅治は珍しく饒舌に色々と話をしてくれた。
それはバレーを知らない私に、少しでもバレーボールに興味を持って欲しくてした行動。
まるで少年の様に目を輝かせて話ていた姿が、最早懐かしさすら感じてしまう。
「…………私の事なんて、優先順位低いのかな」
つい漏れてしまった本音に口に手を宛てていると、スポーツショップから人が出てきた。
「お使い、完了!」
「そうだな」
「寄り道寄り道!」
「あ?まっすぐ帰るに決まってるだろ?」
「そっちの用事に付き合った!だから今度はこっちの用事に付き合う!」
「……分かったよ。何処に行きたいんだ?」
「えっとねぇ〜」
楽しそうに話している男女。
制服を着ているのを見ると、同じ歳位の子達で、部活の買い出しをしていたのかもしれない。
とても仲の良さそうなカップルで、彼女は彼氏に付き合い、そんな彼女に彼氏も付き合っている。
(良いな……あんな関係)
手を繋いで仲良く歩く後ろ姿。あんな風に堅治と一緒に歩いたのは何時が最後だろうか。
そんな事を思ってしまうと、見ず知らずのカップルに嫉妬してしまう。
どうして私はあんな風に受け入れていけないのだろう。
どうして堅治はあんな風に私の事を優先してくれないのだろう。
隣の芝は青く見える、と言う。
でも自分の芝も本当は青いと言う事に気が付かない。周りばかり良く見えてしまうと言う例え。
でも今の私にはそれは例えではない。
だって私はあのカップルの様に幸せでない。
私の事を優先出来ない堅治と、堅治の事を理解出来ない私。
一緒に居る時間も減っていて、本当に付き合っているのかも疑問に思ってきてしまった。
(…………こんな気持ちになる自分が嫌)
モヤモヤが強くなり、それはドロドロとした黒いモノへと変わり、心に少しずつ溜まっていく。
それが溜まっていくと、涙が出てきそうになる。
今すぐに家に帰りたい。あんな幸せそうなカップルを見ていたくない。
泣き出しそうな気持ちを押さえ込み、足早に自宅へと帰った。楽しそうな談笑の声を聞きながら。
◆
手にあるのはとある映画の招待券。知り合いに貰ったと言う親から譲り受けた物だった。