【夢小説】オタク+オタク=? 番外編【影山飛雄/R18】
第6章 ◎スポットライトの浴び方
牛島先輩と二人残されている事に気が付き、慌てていると、牛島先輩は落ち着いた様子で言う。
「寮まで送ろう」
「だだだだ大丈夫ですっ!」
両手を振りながらお断りを入れたけれど、牛島先輩のトーンは一切変わらず、正直過ぎる言葉を投げかけてきた。
「このまま放置したら、海野に怒られる」
(とほほ……そうだよね……私の為じゃなくて、彼女の為、だよねぇ……)
牛島先輩の言葉に結局、モブはモブのままなのだと、改めて実感してしまうのだった。
そう簡単にヒロインに慣れるならば、誰も苦労なんてしないのだから。
◆
牛島先輩に見送ってもらい、ドサッとベッドに倒れ込んでから、手にあるペロペロキャンディを改めて見た。
よくよく考えると、これを買ったのは牛島先輩で、跨いだ形になるけれど、牛島先輩から初めて貰った物になる。
(私はあんな風にはなれないな……)
はぁ、とため息をつく。
ヒロインになりたい、と憧れた過去の自分を殴りたい。
ヒロインと言うスポットライトを浴びている事が、どれだけ大変なのかと知ってしまったら、私はモブでいる事を喜んで受け入れる。
舞台の上にいる役者よりも、舞台の外で見ている観客でいたい。
誰を相手にしても自分を崩さず、凛と対応する海野朔夜は確かにヒロインに相応しい存在だった。
ただのモブが一瞬だけでもスポットライトを当たれたのだから、もう十分である。
女の子として認識して貰えなかったけれど、牛島先輩と話をする事も出来た。
今日の事はシンデレラにでもなったのだ、と自分に納得させ、また明日からただのモブに戻るのだろうと目を閉じた。
◆
「ペロペロキャンディは流石にガラスの靴にはならないもんねぇ」
三日後、未だ食べる気にならずに手元に残るペロペロキャンディを見ながら呟いた。
くるくる渦を巻く様子を眺めて、青空と見比べたりして楽しむ。
ヒロインで本物のシンデレラだったら王子様が来てくれるけれど、生憎の私はモブである。
海野朔夜だったら影山飛雄がすぐにでも駆け付けてくれるんだろうなぁ、と苦笑いしながらくるくるしていると、後ろから声を掛けられた。
「なんだ、まだ食べていなかったのか?」
「 !? 」
驚いて振り返るとそこには牛島先輩の姿。そして、少し離れた所に天童先輩。