第34章 浪花事変（事件はないよ！！）

とは言え、今や世間の勝手な憶測で事件に関わった死亡説が話題になると否定もなく、行方不明か死亡を仄めかすようにメディアへ一切黙秘を貫くほどや。そりゃあもう首突っ込むのが悪いぐらい厳しく釘を刺されまくったし、結局生死がはっきり分からず終いで今後会える日が来るかは分からん。何せ工藤自身がメディアに顔出し過ぎてファンもおるほど有名や、何か事件の被害に遭った事実が公になれば、ましてや死亡しとったら大騒ぎになるのは明白。そうなれば当然工藤家は取材陣に押し寄せられたり世間の嫌な注目を浴びるし、それを懸念して家族が取れる対処法は黙秘する事ぐらいや。流石に工藤探しで暴走しとったオレは却って逆効果とは思われたのか、教えてもらったけども情報は何も無いから徹底しとる。


そして何時しか工藤の死亡説や入院・静養になるような事態をあれこれ考察されとったのが、今ではＳＮＳや掲示板で工藤の活躍を惜しむ声や家族（特に姉）に同情する声が増えていっとる……。正直、今までメディアが著名人の不祥事を報道するのを見ても当事者になる可能性なんて考えた事なかったんやけど、いざ探偵の身で他人事じゃなくなると、如何に情報が『社会的に人を傷つける凶器』になるかが分かった……。


加えてそこまで沈黙を貫いてるだけあって、当然ながら「捜査が進んでへんなら協力しよう」言うてるオレ（探偵）も頼ろうとせん。現状で被害者になった工藤新一は誰かに命を狙われ、学校は休学、探偵の仕事も停止、そして工藤家は誰にも干渉させたがらん……。やからてっきりオレは無理やと決めつけられ、子供扱いされて邪険にされたと勘違いしかけた。


いつもそうやって怒鳴ってくる大人に現場を遠ざけられてきたし、せっかくの依頼でも関係者らから「高校生がほんまに解決できるんか？」って侮られるのもしょっちゅうで。確かに東都の事件で刑事はんらの推理が無かったらオレが冤罪にしかけたけど、その事件以外でオレは難事件を間違える事なく推理できたし、暴れる犯人を自ら倒して捕らえた経験もある。そんな実績から普段他の探偵より犯人を逮捕できるんは自分やっちゅう自信があったし、負けず嫌いやから手柄を誰かに奪われるのは心底嫌やった。オレは工藤を害した凶悪犯を絶対突き止めてたいし、そいつの存在と犯行が無性に憎たらしゅう感じた。