(名探偵コナン】生まれ変わったら名探偵の姉でした(改)
第32章 黒の組織から来た女1
微かに「お姉ちゃん……」と誰にでもなく呟いた彼女の震える声、すると哀ちゃんが初めて恐怖や罪悪感に強張っていた表情をくしゃりと変えた。その目にぶわっと涙が溢れて何度も瞬きしながら堪え、一度はぐっと唇を噛み締めると勢いよくバッと頭を下げられた
灰原「すっ、すみ、ません…でした…っ、申し訳ありませんでしたっ!!私が作った薬で弟さんが死にかけた、幼児化で辛い思いをさせてしまいました……っ!毒を作るつもりが無かったなんて言い訳です、直接殺めていなくても私の作った薬の被害者がいる……っ!色んな人達の大事な家族を奪うかもしれない!!こんなの、謝ってすむ問題じゃないし、赦されないのは分かってます……本当に申し訳ありませんでした!」
椎奈「志保さん……」
灰原「科学者として必ず解毒薬で新一君を助けます、私も本来の自分に戻って刑罰を受けなきゃいけないし……」
椎奈「うん……、絶対叶えられるって信じてる。きちんと話せて嬉しかった、ありがとうね」
堰を切ったように泣きじゃくると嗚咽をあげて何度も謝罪する小さな少女に、私は警戒心から冷たお偽物の態度を止めて素顔と本心を出してくれて安堵した。これで少しでも新一と本性で話す際に険悪な雰囲気にならなければ良い、はっきり言って当時の哀ちゃんの態度は挑発的な台詞もあって悪すぎた。けれど違う世界線のここならばと祈りを込めて、謝罪で下がったままの哀ちゃんの頭を撫でながら「大丈夫だから」と微笑んで言葉を紡いだ
椎奈「大丈夫、これからは大丈夫だよ……。確かに薬を作った貴女にあの子は混乱して荒れる、散々怒って責めて……だけど解毒薬や命を狙われてると知って見捨てはしない」
灰原「えっ?」
椎奈「両親も事件に関わる機会が多くてね、『罪を憎んで人を憎まず』って言える人達だから。きっと私みたいに貴女の事情と気持ちを真摯に話せば、信じて味方になってくれるよ」
だから無理に悪役らしさを演じなくていいんだよ。私は原作の展開もそうだが、何より今世で接して来た家族達の人柄から断言しきった。哀ちゃんはそんな私の言葉に濡れた瞳を揺らして困惑していたが、ある程度信用はして貰えるのか再び頭を下げられて一言
灰原「……ありがとう、椎奈さん」