第30章 １０億円強盗事件

───そうして知らされる報告によると、やはり組織は明美さんを「ＦＢＩの潜入を手引きした危険人物」として、今後も組織の情報を外に漏らす原因を作る可能性が高いと考えていた。そため殺害できる口実となるよう、例の１０億円を強盗するというミスを誘発した任務を妹と一緒に組織を抜ける事を交換条件に命令された


因みに、組織の情報屋であるバーボンに銀行の金銭情報を探ってもらう手筈を提案してみたものの、当然の如く却下されたらしい。公安は風見さん経由で明美さんに１０億円を奪う指令が来たと把握した後、銀行に仕掛ける違法行為の段取りとして事件の計画の考案と銀行員に紛れた警察官の裏工作があった。と言うのも、明美さんは銀行の？が所有している１０億円を盗んだのではなく、公安が用意していたその金銭を持ち出したのだ。もちろんその準備には厳重な警備を掻い潜り、作業中は監視カメラの映像を何もないように弄り、データの改竄などの大掛かりな作業があった


そして本当に銀行が所有していた物は後日、公安に捜査権が渡って調査すると強盗犯が隠した１０億円が発見されるというシナリオだ。更に影では組織が宮野明美をジン達の手で銃殺出来たと思っており、血糊を仕込んだ防弾チョッキのおかげで腹部を撃たれた頭は本物の演技で死亡した事になっている。日本の公安の偽装工作だけじゃなく、アメリカのＦＢＩの証人保護プログラムを使って保護しているのだ。これがニュースで大きく話題となった１０億円強盗事件の真相であり、後に追加情報として強盗犯三人の死亡が発表される───





……という説明をしてくれた後、冒頭の一言が満面の笑顔の景光くんから飛び出して。合わせて女性も緊張からかうわずった声で背筋を伸ばし、もう一度頭を下げられるので私も混乱のあまり変な声が出た。だって変装中の公安刑事かと思っていたし、気のせいじゃなければ目の前の女性を宮野明美だと暴露してたし、偽名の灰原玉記ってのも妹と声優さんのお名前関連なんだよねぇ



諸伏「彼女はこれから椎奈ちゃん専属の家政婦になって、ご実家と椎奈ちゃん家の両方で働いてもらおうかと思ってさ。ご実家は優作さんに許可をもらってて、椎奈ちゃん的にはどうだろう？」

椎奈「家政婦さんは有難いし助かるなぁ……。だけど私のお家はともかく、実家は流石に危ないんじゃない？」