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(名探偵コナン】生まれ変わったら名探偵の姉でした(改)

第20章 工藤家の別居と、彼らの深淵



どうやら話の調子からして、今日は刑事事件が無くて探偵も警察も平和に過ごせたらしい。良きかな良きかな、どうかそのまま発生率を下げてほしい……。そんな切実な気分でいたんだけど、ふと『探偵』のワードに新一と別れる際の会話を思い出す───










あれは両親を見送った後、私が緑川さんと出て行く前に「これだけ言いたい」と呼び止められた。その時、珍しく不安そうな表情の新一からは昨夜の話を切り出されたのた




新一「……なぁ姉さん、俺さ、昨夜の話を聞いて一晩色々考えてみたんだ。本当になりたい探偵像は何なのかって」


椎奈「……そう。それで考えてみてどうだった?何か変わったの?」


新一「……ああ。俺は探偵の本質が事件の解決にあって、それさえ極めれば一人前だと思ってた。しかも一般枠の仕事じゃなくてメディア向け、警察に頼られる立場を目指してたから一層夢中になったんだ。だからぶっちゃけ犯人なんて、歪んだ悪意の権化みたいにしか思ってなかった。今まで容赦も慈悲もいらねぇと思ってたし、解決できればそれでお終い。俺も皆も犯人が分かれば満足出来て、逮捕の後は警察や他の仕事なんだと気にもしなかった。ましてや当事者の心境なんて眼中に無かったよ。俺は目立って賞賛と名誉を求めてばかり、それが人を助ける事で正義の証にみたいに思ってた」


椎奈「……うーん。それはまた随分偏見というか、極端すぎたのね」



新一「おう……。だから今回、姉さん達の意見を聞いて目が覚めた。確かにどんな理由があっても、そこで罪を犯してしまえば一番悪いのは容疑者だ。絶対赦されちゃいけねぇ事だし、真っ当な生き方を捨てて地獄を選ぶような覚悟も感情も分からねえ。だけどそれは俺や皆が無事で恵まれてるからだ、挫折や不幸を味わった経験が無いからだ。被害者が知らない相手だからこそ、推理にのめり込んで躊躇いも罪悪感も無い……。それを理解してゾッとしたよ、誰だって大事に思ってる相手や物事があったら、傷つけられて怒って赦せなくなるのも当然だ」


椎奈「……そうだね。出来れば知らないままでいたいけれど、誰もが密かにそういう立場になって過酷な境遇と戦いながら必死に生きている。だから被害者自身や遺族や親しい者達の為に、それを動機に正しく罰する立場か復讐に進んだ者達へ、理解と思い遣りを持つのも必要よ」
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