第3章 小波の魔法使い

一方、捜査に参加していない私と母はと言えば、二人で離れた場所に立って新一達の様子を見守っていた。赤井さんが刑事さん達に同乗者がいたかもしれないと伝え、近くで時計を扱う店に強盗がなかったなどを問うていた


すると刑事が1時間くらい前に時計店に2人組の強盗が入ったと言うので、彼は大量のブランド品の腕時計が入ったバッグの事を報告。事故を起こした車に乗っていた二人が件の強盗犯だと考えているらしい。新一と秀吉は車が落ちた後、海の家にＴシャツを買いに来た三人の客を連れて来た


一人目はTシャツ、海パンに腕時計をした福水繁克。太った福水は濡れた着衣を持っていた。二人目はTシャツの裾を前で絞り、パレオを身に着けた北森靖絵。ビーチサンダルを履いた北森も腕時計をしていた。そして三人目は星マークが付いたアロハシャツを着た大網頼哉。細身の大網は両腕に腕時計をはめていた。福水さんはTシャツと海パン、北森さんはビーチサンダル、大網さんはアロハシャツを海の家で購入したという


福水さんゴムボートの上で彼女から結婚話を切り出され、煮え切らない態度をとったら海に落とされたと証言する。福水は服が濡れたためＴシャツと海パンを購入し、怒った彼女は帰った可能性が高いという。北森さんは男漁りのために海に来たが、ビーチサンダルの鼻緒が切れたので、新しいのを購入したと証言。北森さんは財布だけ持ち、タクシーに乗って海まで来たという。大網さんはひと泳ぎしてシャワーを浴びている時に置き引きに遭ったと証言。バッグを盗まれ、仕方なくアロハシャツを買ったという。刑事は2つの腕時計について訊ね、大網さんさ日本とNYの時間だと答えていた


……とまぁ、一見彼らは普通の事を言っている。けれど唯一、北森さんだけは嘘を言っているなぁとなんとなく思った。根拠はないけど演技を学んでいる身、直感ながら確信を持って言える





椎奈「……母さん、多分犯人はあの女の人よ」


有希子「え？」




私が集められた三人のうち、女性の方を見ながら言ってみると母さんはビックリしていた。「どうしてそう思うの？」と聞かれてみても、「なんとなく」としか言えないけれど……


そんな私の言葉を聞いた母さんは一人ホテルにいたままの父に電話して、容疑者の写真や状況の説明と私が犯人だと思う相手を言うと───