第9章 仕組まれた飴と鞭*
side.名前
カリカリと書き物をする悟さんの胸に擦り寄る。
こういう任務なら、いいかもしれない。
「名前。疲れてきた…」
「コーヒー飲む?」
「んー。おっぱいに挟まれたい」
「えっ?」
悟さんは私の身体を引き寄せると、胸に顔を埋めた。
悟さんにとって報告書は天敵なのかな?
よしよしと頭を撫でて慰める。
でもこれじゃあ、私は邪魔してるんじゃないかな?
「悟さん。私は歌姫先生の所に預けられるの?」
「そんな事させないよっ!」
悟さんは顔を上げると、またデスクに向き直った。
どうやらやる気が出たみたいだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
しかし、ただ膝に座っているというのはつまらない。
ウトウトしてきちゃう。
「悟さん…まだ?眠くなってきちゃったよ」
「んー。あと3分で終わるから寝ていいよ」
私は悟さんの胸にもたれかかって目を閉じる。
心音が聞こえて心地いい。
ちょっと前の私なら、こんな所でうたた寝するなんて出来なかった。
全部、悟さんのお陰だと思う。
こんな私に愛情を注いでくれたから、安心して眠れるようになったの。