第32章 初めての恐怖*
side.冥さん
随分と器用な子だと思った。
陰陽五行説はオーソドックスだけど、
古いからこそ奥が深い。
「名前。そのまま祓えるかい?」
「はい。火気は土気を生じ、土気は金気を生ずる」
金はナイフと成り、
呪霊を切り裂く。
甲高い声と共に、
呪いが消滅する。
「上手く祓えたじゃないか」
「ありがとうございます。冥さんのお陰です」
本当に大したものだ。
学長の話では、最近まで治癒の術式しか使えなかったというのに…。
流石、五条家に選ばれた子だね。
名前の頭を撫でていると、
どこからともなく五条くんが現れた。
「絵里はどうしてここにいるのかな?」
「えっ?…あっ…えっと…」
名前を庇おうと、
私が助け舟を出す。
だけど、五条くんはそれすら気に食わない様子。
私に対して敵意を顕にした。
てっきり溺愛してると思ってたのに…
いや。
溺愛故の怒り…
というより心配かな?
こんな人間味のある彼を初めて見る。
私は意地悪を言いたいわけじゃない。
ただ名前のことになると、
視野が狭くなると言いたかった。