第1章 僕の初恋
side.五条悟
体育館に着くと、
1人の少女が目に入る。
長い栗色の巻き髪を、
一つに束ねた女の子。
その子が笑うと、
まるで花が咲いたみたいに感じた。
初めてだったんだ。
目を奪われる感覚に陥ったのは…
ドクンッと胸が高鳴る。
恋に落ちる瞬間って…
こういう感覚なのかな?
「ヘアバンドをお召しになっている方がお嬢様です」
「だってよ。悟」
「ん?ああ」
やべ。
完全に魅入ってた。
「どうした?悟」
「いや…特にないけど?」
「気になる子でも見つけた?」
「…そんなところ…」
俊は敏い。
流石だね。
まるでフランスのお姫様みたいな可愛らしさ。
その整った容姿だけでも目を惹くのに、
彼女はネットのロープを跨ごうとして、
そこに足を引っ掛けた。
それは、もう派手に転んだ。
2面分のネットがドミノ倒しになる。
「ちょっとっ!名前っ!大丈夫っ!?」
「痛た…大丈夫…」
「あははっ!本当にドジなんだから」
「へへっ。皆、ごめんね?」
彼女の友人の代わりに、
俺が手を差し出したくなった。