第31章 可愛い妻の誘拐
side.名前
「私は冥冥だよ。宜しくね」
「宜しくお願い致します…冥冥さん」
「五条くんは私を冥さんと呼ぶけれど、君は特別…」
冥さんはどこか影があって、
悟さんとは違う色気を放つ。
近づいてきたと思ったら、
クイッと顎を持ち上げられた。
「私のことは特別に“お姉様”って呼んでいいよ?」
その仕草に、私の心臓は反応する。
「えっ?あっ…はい。お姉様…」
「うん。いいね。その響き」
試しに呼んでみると、
冥さんは満足そうにクスリと笑った。
そして私の頬にキスをする。
海外でもないのに、
こんなご挨拶を受けるなんて…
恥ずかしさで、顔に熱が集中した。
「今日はね、君のお父上の依頼を受けにきたんだよ」
「えっ!?お父様のですか!?」
冥さんが父の担当だなんて…
家族のことなのに知らなかった…
でも、当然か。
私はもう五条家の籍だし、
苗字家とは関係ない。
お父様は…
私のことどう思っているんだろう?
突然、呪いが視えるようになった娘を…
やっぱり家族とは思えない?
「一緒に行ってみるかい?」
俯いた私に、冥さんは優しく提案をしてくれた。