第31章 可愛い妻の誘拐
side.名前
これで合ってるのかな?
放課後。
首を傾げながら、空き教室で一人呪術の基礎を練習する。
参考にしているのは、
悟さんのご実家にあった古い文献。
きっと凄く貴重なものだと思う。
誰かに教えを請いたいけど、
悟さんは最強すぎて論外。
七海先輩も凄く強いから、
何となく話しかけにくい。
残るは伊地知先輩なんだけど、
凄く避けられてる気がするし。
(↑だって五条さん怖いんだもん…)
硝子さんや歌姫先生にそれとなく聞いてみたけど、
皆、口を揃えて悟さんに聞いた方がいいと言う。
誰に相談したらいいんだろう?
「はぁ…」
ため息を吐いて、途方に暮れる。
「悩み事かい?」
「、!!」
突然聞こえてきた声に驚いて、教室内を見渡す。
すると妖艶な雰囲気の女性が、気配もなく立っていた。
「フフッ。君がMrs.五条だね?」
「あ、はい…えっと…」
天元様の結界内にいるし、
服もこの高専の物。
だから関係者の方だよね?
悟さんと私のことも知ってるみたいだし。
「初めまして。私、悟さんの妻の…」
「名前だね?」
「はい…えっと、五条名前です」
結婚して2年も経つのに、
未だ五条という性に慣れない。
私は悟さんの妻なんだから、
もっとしっかりしなくちゃ。