第29章 お仕置き*
side.名前
「名前さ。よく頑張ったね」
「えっ?」
予想打にしていなかった称賛に、
私はキョトンとしてしまう。
「名前は頑張ったよ。偉かったね」
「…そんな…こと…」
喉の奥がキュッと締め付けられて、
同時に目頭が熱くなるのを感じた。
悟さん。
私ね、誰かにそう言って欲しかったの。
大粒の涙がポロポロと溢れる。
認められるってこんなに嬉しい事なんだ。
「あとさ、怒ってごめんね?」
「…ううっ…ひっく……うんっ」
「抱っこする?」
「…うんっ…抱っこ…」
私ご両手を広げると、
悟さんは私の両脇に手を入れて、
膝の上に座らせた。
甘えて頬擦りをすると、
頭を撫でてくれる。
「逃げずによく頑張りました」
本当は怖かった。
でも頑張ったの。
「なのに僕はそれを良しとしなくて、ごめんね」
「……何で…嫌だったの?」
「君が成長すると、どこかに行っちゃう気がして、喜べないんだ…」
眉を八の字にして、私を見つめる悟さん。
「私…どこにも行かないよ?」
ううん、違う。
どこにも行けないの。
私の事を甘やかして、
こうやって抱きしめてくれる人は、
悟さん以外にいないもの。