第28章 妻の開花
side.名前
この世界は5つの要素で出来ている。
当たり前すぎて分からなかった。
何故、私が反転術式を使えるようになったのか。
それも漸く分かった。
ただ自然の巡りも、その逆も、
両方を良しとしていたからだったんだ。
父の病室には、お見舞いの花が沢山ある。
私はその中の1つの花瓶に手を触れた。
「水気は木気を生ずる」
例えば水は植物や木を育ててくれる。
今まで人にしていたように、
今度は物質自体に私の呪力を流し込む。
すると水を栄養分に植物が五芒星を描き出した。
「木気は火気を生ずる」
今度は植物が燃えて火が起きた。
「火気は土気を生ずる」
植物が燃えた後は土ができる。
「土気は金気を生ずる」
土の中からは金属を産出。
「金気は水気を生ずる」
金属の表面には水が生ずる。
「五行相生」
五芒星が木、火、土、金、水を循環し終える。
「金気。呪霊を祓え」
そう唱えると、私のイメージ通りの鋭利な金属が
五芒星から成り立って、呪霊を貫いた。
その瞬間、耳を劈くようなノイズを発し、
呪霊は消え去る。
「…できた…」
安堵から力が抜ける。
膝からカクンと落ちそうになるところで、
悟さんに抱えられた。