第28章 妻の開花
side.五条悟
腐っても親子だもん。
当然の反応か。
僕は名前を強く抱きしめる。
「別に無理して行かなくても良いし。様子を見に行くにしても僕がついてるから」
「………うん…」
「大丈夫だよ。僕がいるから」
「………うん…」
名前はポロポロと涙を流しながら、僕に縋りついきた。
父親が心配なのか。
それとも怖いのか。
どちらの気持ちで泣いてるんだろ?
心根の優しい名前の事だ。
多分、両方だよね。
僕みたいに冷酷さを持ち合わせていたらいいのに。
本当は黙っていたかったんだ。
君に悲しんで欲しくなくて。
泣いて欲しくなくて。
でも名前の父親だから。
知る権利があるって、これでも考慮はしたんだよ?
僕が決めていい事じゃない。
僕にできるのは名前の側にいて支えること。
それだけだから。
「病院、行きたい?行きたくない?」
「………本当はっ…行きたく…ないっ…」
「うん」
「…怖いっ…」
「うん」
そうだね。
怖いよね。
「でもっ…行く…」
「うん。分かった」
僕は泣いている名前を抱き上げて。
あやす様に背中をトントンと叩く。
名前は相変わらず声を殺してなくけれど。
もっと僕に頼ってくれていいのにな。
そうすれば僕は君をグズグズに甘やかして。
何も怖い事なんてない、僕という檻に閉じ込めるのに。