第28章 妻の開花
side.名前
「それって…今までと何か変わるの?」
「そうだなぁ。名前の場合だと…うーん…」
悟さんが首を傾げる。
「今まで1度に1人までの治癒しか出来なかったでしょ?」
「うん」
「それが1度に2~3人を治癒できるとか…かな?」
「そっか」
それは有難いかも。
硝子さんと比べて、
私の治癒は効率が悪かったし。
悪い方に働くわけではないようなので、
一先ずホッとする。
悟さんが言うんだもん。
大丈夫だね。
「あー。でも…」
「うん?」
「いや。何でもないよ。さあ、食べよう♥」
「はい」
悟さんが何かを思いついたように見えたけど、
「何でもない」と言うし、
きっと気にする事ではないと思う。
私達は何事もなかったように、
お箸を進める。
「そういえば、もうすぐ結婚2周年だね♥」
「あれ?もう8月?」
もう夏なのに、すっかり忘れてた…
「そうだよ。今年もグランピングに行こうか?」
「いいの?」
「うん。昨年、約束したでしょ?」
悟さんは忙しいのに、
欲を出していいのかな?
「…悟さんが…無理しないなら…行きたい…です…」
「分かった。無理はしない。だから今年も行こうね♥」
「うん」
無理なら無理でいい。
正直、グランピングには行けなくてもいいの。
悟さんがね、
私との約束を覚えていてくれた事。
それが何より嬉しいの。