第28章 妻の開花
side.名前
ここ最近、変な夢をみる。
ある時は海の中へ。
ある時は木の中へ。
体が吸い込まれる夢。
そして今日は火に包み込まれる夢をみた。
「名前?名前ちゃーん?朝だよー」
大好きな人の声が聞こえて、
薄ら目を開ける。
「…んっ…あれ?…もう朝?」
「うん。おはよう」
「…おはよう…」
今日もご機嫌な悟さんに、
“ちゅッ♡”と啄むようなキスをされる。
いつもなら彼の口付けに酔いしれるけど、
今日は上の空だった。
奇妙な夢…
私は着替えて悟さんの作ったご飯を食べる。
「いただきます」
「はい。召し上がれ♥」
もぐもぐと美味しく食していると、
悟さんが不思議そうな面持ちで私を見ていた。
「どうしたの?」
「名前さ。最近、変わったことない?」
「んー…」
変わった事…
特にないけど、
強いて言うなら、
変な夢を見るようになったくらい。
でも、あれは変わったことにはならないよね。
首を傾げて考えるけれど、
特に思いつかない。
「ないと思うけど…何で?」
「んー。僕には呪力が変わって視えるんだけどなぁ…」
「そうなの?」
「うん」
そんな食い入るように見られたら、
不安になってきちゃうよ。
私は悟さんと違って、
呪術師の家系でもなければ、
呪いや呪霊などにも縁遠く生きてきた。
だから急にそんな事を言われても、
ピンとこないし、想像さえも出来ない。