第23章 僕の過去
side.五条悟
名前は泣きながら部屋を飛び出してしまって。
僕は振り払われた手を呆然と見つめていた。
そりゃそうだよね。
純粋無垢で、僕しか知らない彼女からしてみたら。
僕は汚れ過ぎている。
名前を探す前に。
僕も心を落ち着かせよう。
部屋を出て、高専の敷地内を一時間くらい散歩した。
僕が遊んでいたのは本当に昔のことで。
俊とつるんでいた時だ。
名前に出会ってからは。
彼女以外を抱く気にもなれない。
それくらい夢中なのにな。
宿舎に帰っても当然名前の姿はない。
探しに出ようかと思った時。
机の上にメモを見つける。
“お世話になりました”
という走り書きだけ残っていた。
携帯電話を鳴らしてみても。
この部屋から着信音が聞こえてくる。
えっ?
マジ?
僕、捨てられたの?
頭を抱えて、愕然とした。
こんな事になるなら。
話さなければ良かったと後悔する。
僕の実家に連絡した形跡はないし。
自分の実家に帰るとも思えない。
歌姫や硝子の所の探しに行っても。
匿っている様子もないし、寧ろ驚いていた。