第22章 妻の過去
side.五条悟
「それで?名前ちゃんのお父様とは、お話し出来たの?」
流石、僕の母だ。
敏い。
一日だけ、名前を預かって欲しい。
そう頼んだだけなのに。
名前の父に会っていたと知られていた。
敵わないなぁ。
「んー…まあね」
「そう…」
僕の顔を見て、母も微妙な顔をする。
あの父親が改心するとは思えないんだ。
母さんもそう思ったから。
名前を引き取ったんじゃないのかな?
「悟さん」
「うん?」
「今日。名前ちゃんに聞いたけどね。今…とても幸せみたいよ」
「…そっか…」
目を細めて、彼女のことを想う僕の母。
本当にそうなら嬉しいな。
なんせ名前の幸せの閾値は低いから。
「悟さんは名前ちゃんを大切にしているのね」
「そりゃ。僕の可愛い妻だもん。この世で一番愛してるよ」
「そう」
母は嬉しそうに笑った。
『悟さん。人は何故、結婚して自分の家庭を持つのか分かる?』
以前、母にそう言われたのを思い出す。
僕はまだ未熟でその意味を理解していなかったんだ。