第22章 妻の過去
side.五条悟
保身馬鹿。
世襲馬鹿。
高慢馬鹿。
彼は僕の嫌いな三拍子が揃っている。
それでも僕の可愛い妻は、
こんな馬鹿な父親を慕っていて、
今でも褒められたいと感じていんだろうなぁ。
「…善処…致します…」
「良かった。話が早くて。挙式の際は、どうか娘さんを褒めてあげて下さいね。お義父さん」
「…はい…」
これで改心して欲しいけど。
どうだろうなぁ…
「では、僕はこれで。お時間を割いて下さりありがとうございました」
僕は彼の前から、スッと姿を消した。
今頃きっと驚いているだろう。
そうでなければ困る。
可愛い名前を苦しめたように。
同様に恐怖を感じて欲しい。
じゃないと名前と離れてまで、
わざわざ来た意味がないからね。
実家に帰ると、名前と母の笑い声が聞こえてきた。
「ただいまー。名前ちゃーん♥名前の悟さんが帰ってきたよー♥」
「あっ!悟さんの声っ!」
「あら?悟さん?もう帰ってきちゃったの?」
名前は嬉しそうだけど。
母は残念そうな声を上げる。
あれ?
ここ僕の実家だよね?
一応、僕は当主なんだけど。