第22章 妻の過去
side.名前
「…悟さんは…どうしてそんなに優しいの?」
ずっと不思議だった。
「名前を愛してるからだよ」
「でも…私のお父様もお母様も…こんなに優しくしてくれなかった…」
抱きしめて欲しい時に。
こんな風にギュッとしてくれなかったよ?
「んー…それはきっと愛の違いかもしれないね」
「愛の違い?」
「名前は僕にキスしたいでしょ?」
「うん」
毎日。
キスして、抱きしめて。
愛してるって言って欲しい。
「エッチもしたいでしょ?」
「…うん…」
ポッと顔が赤くなる。
確かにエッチなこともしたい。
「僕の愛は名前の夫としての愛だよ」
「…うん?」
よく分からない。
「名前のご両親は、僕の妻に相応しいように。厳しく育てたんじゃないかな?」
「…そっか…」
「だから僕の愛とは少し違うんだよ」
悟さんの言ってることが、漸く分かった。
お父様とお母様は、私のために厳しくしてたんだ。
悟さんのような素敵な男性に嫁がせるために。
「悟さん」
「うん?」
「私をお嫁さんにしてくれて、ありがとう」
私は悟さんに抱きついて、キスをした。