第22章 妻の過去
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悟さんに初めて自分の過去を話した。
幼い頃の私は泣き虫で。
両親はそんな私をみっともないと叱った。
悟さんがしてくれるように。
頭を撫でて慰められた事はない。
「泣き止むまで部屋から出てくるな」
そう言われて。
いつも自室で声を殺して泣いていた。
父も母も愛情を注いでくれたと思う。
良い学校に入れてくれたし。
習い事もさせてくれた。
それでも私は家に帰るのが怖くて。
学校にいる時間が、唯一笑っていられる時間だった。
母は父より優しかったけど。
「女性として賢くありなさい」と強く言われ。
勉強以外にも、怒られる事は多かった。
お箸やナイフ、フォークやスプーンの使い方。
食べ方まで注意をされ、泣くと怒られる日々。
習い事も泣きながら頑張ったけど。
賞をとっても褒められた事はない。
母が他界した後は、父がより怖くなって。
毎日、何回も吐き続けた。
いつの間にか…
私は呪いが視えるようになっていた…
私が泣いても悟さんは怒らない。
頭を撫でて慰めてくれるし、
それすら可愛いと言ってくれる。
こんな泣き虫な私を、
好きだと言ってくれた。
私が笑うと、
一緒に笑ってくれるし、
寂しい時は、
ギュッと抱きしめてくれるの。