第2章 お見合い
side.名前
「…あ、あの…」
「うん?」
「私っ…は…は…初めて…なのでっ、優しく…してください…」
「へっ?」
「えっ?」
違うの?
羞恥心で顔に熱が集中する。
「ははっ!僕としては嬉しいけど。君の心の準備が出来るまで待つつもりだよ?」
「………そう…ですか…」
恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
「今はね、名前が安心して眠れるようにしたいだけ」
「えっ…あっ…わわっ!」
悟さんは私の体を包み込むようにして、
抱きしめた。
「少し、こうしていようか」
「…はい…」
ドキドキする。
同時に喉元まで何かが込み上げて、
涙が出そうになる。
私…
こんな風に、
人に優しく抱きしめられた事がない。
背中を一定のリズムで叩かれて、
それが次第に心地好くなってくる。
安心する。
悟さんに言われて気がついた。
確かに。
言われてみれば、
ずっと眠れていなかった気がする。